わたしたちの暮らす瀬戸内と、多島美

「多島美」とは、内海に数々の島々が連なることであらわれる、景観の美しさを称えた言葉。

大小合わせて約 720 もの島々が点在し、豊かな生態系を持つことで知られています。

それぞれの島に固有の文化があり、人の営みの歴史が景観に刻まれてきました。

穏やかな海に個性豊かな島々が浮かび、ゆるく繋がり合う―そんな多島美の景色は、時代を超えて人々の心を惹きつけてきました。

tatoubiが拠点を置く岡山県倉敷市は、瀬戸内海に面しています。

瀬戸内海は、日本の本州西部・四国・九州に囲まれた日本最大の内海で、まさに「多島美」。

瀬戸内海地方は昔から国の政治・経済・社会・文化など様々な分野にわたって先駆けていました。

かつて大陸の外国文化が北九州から瀬戸内海を通って、近畿地方へと伝えられる時、瀬戸内海が絶えず橋渡しの役割を果たしてきたからです。

それにより沿岸に独自の文化を育みました。古代には遣隋使や遣唐使が瀬戸内海の海の道を通して大陸へと出向き、近世には朝鮮通信使の船が瀬戸内海に立ち寄りながら江戸へと向かいました。

幕末にはシーボルトやオランダ商館長などが長崎の出島から瀬戸内海を通って江戸を目指しました。

瀬戸内海は九州や京都、江戸をつなぐ海の道であり、中国や朝鮮、西洋と交流する道でもあったのです。

昔から穏やかで美しい風景として有名だった瀬戸内海。その美しさを欧米の知識人たちもいち早く発見し、絶賛しています。

シルクロードの名付け親、フェルディナント・フォン・リヒトホーフェンは「広い区域に亙る優美な景色で、これ以上のものは世界の何処にもないであろう」と述べており、その美しさを旅行記に書いて世界に発表しました。

そのひとつひとつ個性あるものが一体となるからこそ、詩情豊かな「多島美」が織りなされる。

また、近代ツーリズムの祖といわれるトーマス・クックは「我々はあまりにも豊かな自然の恵み、次々に移り変わって終わることを知らない景観の美しさに呆然としてしまった」と感嘆しています。

そんな瀬戸内海ですが、私たちの生活の変化に伴い、本来の環境が大きく崩れ始めています。

瀬戸内海は、閉鎖的海域という大きな特徴をもっています。

閉鎖的海域とは、周囲を陸に囲まれた海のこと。海域や沿岸地域では人々が暮らしを営み、多くの産業が生まれ、交通が発達してきました。
そして多様な文化が生まれたのですが、人々の活動により海の汚染が進んでしまいました。

海水の入れ替わりが少ない閉鎖的海域は、一旦汚染が進むとなかなかきれいにならないという問題があります。

沿岸開発や水質汚濁により、魚の生息や鳥の渡来地や餌場として重要な役割を果たしている藻場、干潟が次々に失われました。

また、家庭から流れ出た排水が原因でプランクトンが異常に発生し、魚などに被害を与える赤潮も発生し続けています。

また、海ごみ問題も抱えています。

瀬戸内海は水の入れ替わりが少ないので、瀬戸内海の海ごみのほとんどは瀬戸内海地域から排出されたものと考えられています。

多島美のような美しい風景があり続けるために、私たちに何ができるのか。

tatoubiはこれから瀬戸内海に浮かぶ島々のように形を変えて、時には海、空、風となり、個性を尊重しながら、人と自然、人と人をつなぎ、よりよい関係性を探っていきます。

瀬戸内海地方が昔から国の政治・経済・社会・文化など様々な分野にわたって先駆けていたことから、tatoubiも多様なセクターの方々とものづくりを通して、共創していき、作る方・使う方や地球を想う価値観を大切にしていきます。

そして、tatoubiの製品を通して、新しい気づきを見つけていただければ幸いです。

わたしたちtatoubiは、人と自然をつなぎ、
地球という大きな家に想いを馳せるきっかけを